つらつらブログ

新卒4年目.エンジニアとしての生活が始まる。読書録備忘録など.思ったこと感じたことを記録しています.

『「就活」の社会史: 大学は出たけれど... 』難波功士

難波功士『「就活」の社会史: 大学は出たけれど』

 

 

 

「就活生に読んでほしい」

この一言につきます。

とくに学生で就職活動を控え、先輩から苦労話を聞き、周りの意識高めの学生を見にし、得も言われぬ不安に襲われている学生に読んでほしいです。

あなたのその宙ぶらりんな状態を、地に足の着いた状態に戻してくれる、そんな本です。

以下、その理由を説明するために各トピックについて私なりの説明をしていきたいと思います。

 

  1. 就活での言説と情報環境
  2. 就活における情報の信頼性 
  3. 「確からしさ」と「メディア」
  4. 『就活の社会史』

 

1.就活での言説と情報環境

まず就活における「言説」です。「言説」とかカッコつけた言い方してますが、いうなら就活でみんなが色々話して噂とか、一般常識みたいになっていることぐらいに考えてください(例えば、内定辞退するとコーヒーかけられるとか...)

 それで、その「言説」を形づくっているのが、「情報環境」です。今、あなたがある就活の噂を耳にしているとして、その情報はどこから得ましたか?例えば、テレビ、雑誌、ネット、友人、説明会であった学生...など。それら、様々な「メディア」によって、普段の「情報環境」が形成されています。 

 

2.  就活における情報の信頼性 

  それら「情報環境」によって「言説」が作られているという話をしましたが、その「情報環境」は時代によって変化したわけです。雑誌、テレビ、そしてネット。とくにネット時代に入り、情報はいくらでも出てくるので、「言説」も有象無象な様相を呈しています。で、その状況なので、受信する情報を、全て受け取っていると処理しきれなくなり、自分が情報に振り回されてしまいます。

 

そのときに一つの判断基準としてみてほしいのが、その情報の「確からしさ」です。

例えば、説明会であった学生から聞いた噂、就活掲示板で耳にした選考情報、それってどの程度信頼できますか? そのよくわからない情報に振り回されて、貴重な時間と知力を消耗していませんか?
そのムダを軽減し、自分の時間と体力を必要なものに振り分けられるように、情報をズバズバ取捨選択してほしいのです。そのときに「確からしさ」に注目して、信頼できる情報かどうか判断してください。

 

3.「確からしさ」と「メディア」

 「確からしさ」はわかった。で、その「確からしさ」はどう判断すんの?という話になるわけですが、そのときの判断基準の一つとして、ここでは「メディア」を挙げたいです。人、本、テレビ、ネット...全部メディアです。

そこで今回提唱したいのは「本」です。なぜ「本」かというと

  • 体系性

 本というメディアの特性として、書き手が何らかの「主張」があり、それに向かって「論理的」に話が進んでいくわけです。(本によって「論理的」の度合いにも差があります。またその分、「読む」のも時間はかかります)で、これがなぜ良いかというと、論理を追うことで、読む自分の頭にも情報が体系的に整理されるからです。この点は、ネットの情報との大きな違いです。もちろんネットにも体系的な記事というのはありますが、多くはツギハギで取って付けたような記事が多いです。その場ではわかっても、アタマには残りにくいです。なぜなら体系的に整理されないから。

  • 信頼性

 次に「信頼性」ですが、「本」は、多くの場合引用が示されています。すなわち、筆者の空想ではなく、あるソース・情報源にもとづいて確かな議論を展開しているわけです。それは索引という形で巻末に端的に示されます。この点で、本は信頼性を担保しています。もちろん、引用というものは情報と不離不足の関係です。すなわち、いかなる媒体においても出典先というのは明示されなくてはなりません。ですが、特にネットを見ると、(少し前のオウンドメディア問題に端的なように)出典明記の精神が希薄です。

 

この2点が、私の考える「本」というメディアの利点です。(もちろん、全ての本がこられの基準を十分に満たすわけではないですし、他のメディアの情報でもこれらを満たすものは存在します。ただ私の考えとして、「本」は他のメディアよりも秀でている、という話です)

 

4.『就活の社会史』

 つらつら書いてきまして本題ですが、ここで『就活の社会史』の登場です。

なぜ私がこの本を、就活生に推薦するかというと、

 

現在の「ウェブによって促進された就活周りの有象無象な情報」に対して

「本」というメディアによって「確かな情報」

 

を提供してくれるからです。

 

本の内容をかんたん説明すると、

「明治時代から現代までの主に新卒学生の就職活動状況と、その時代ごとに情報源として利用されてきたメディア、を説明し、就職活動の歴史的な変遷を描く」

というものです。

 

著者の専門分野とも関連して、本書は就活の社会史を描くにあたって、主に同時代のメディア、雑誌や映画を参照しています。それがなぜよいかと言うと、「過去の事実」だからです。例えば、「今の最新の就活はこれ!」のような半分妄想混じりの空想的就活論とは全く違います(もちろん、対象が就活の未来か過去と違っているので、同じ水準で比較はできませんが、妥当な議論を展開することはいずれにも必要条件でしょう)

 

そういった情報源を挙げていることと、体系性の最低の担保によって、「納得度」がもたらされます。(もちろん読む以上、批判的思考は必須ですが、今回はその議論は割愛します)

 

で、それが現代に生きる就活生にとって何がよいかと言うと、「安心」するからです。すなわち、

「過去の就活生も一緒じゃん。今に始まったことじゃないんだ!私だけじゃないんだ!!」

と、歴史の流れに自分を位置づけることで、謎の安心感が得られます。

というか、今の就活を相対的に眺められるので、冷静に判断する思考のベースができます。

 

そんなこんなで、情報疲れという現代病に苛まれる就活生・学生のみなさん、一度ウェブとかいう情報ギラギラメディアから離れて、「本」と一対一で向き合い、ほとぼりを冷ましてみてはいかがでしょうか?(この記事がそのウェブ上に存在するという矛盾)

 

 

 

ではでは。