『炎上』と『拡散』の表現学――小峯隆生+筑波大学ネットコミュニティ研究グループ
『炎上』と『拡散』の表現学――小峯隆生+筑波大学ネットコミュニティ研究グループ
SNSにおける「炎上」と取り扱い、ある投稿に対するつぶやきを、評価(+・-・0=中立)で分類し、それらの評価点を合算した数値を時間軸であらわし、いわゆる「炎上」したものは下降するグラフを描いていた。炎上を、「最初は高評価であったが後に炎上したもの」、「炎上の火消しに成功したもの」、「当初から炎上したもの」、などへ分類し、それをグラフで視覚的に一致させ直感的にわかりやすかった。
オリジナルの研究は論文となっているようであるが、本稿はそれをベースにより一般的な読者にも親しみやすい形で提供したものである。
そのため文章やその表現も、研究ベースであるのとはうってかわり、ネットで用いられるような言葉遣いである。
また炎上過程を分析するさいに各種のつぶやきに言及しているが、その引用形式からしてしょうがないが、まとめサイトのようである。
要するに、内容はアカデミックとしても、体裁がそうではないため、読者によっては著者ならびに機関の評価を下げる可能性もあると思う。
そこは割りきって読むべき本だと思うが。
またロングテールについては、(少なくとも私の解釈とは)通常とは違う定義が用いられている。
『問題解決のための「社会技術」 分野を超えた知の協働』――堀井秀之
『問題解決のための「社会技術」 分野を超えた知の協働』――堀井秀之
社会問題といっても、現代社会において様々な要因が関連しており、問題解決のためには文理融合的な試みが必要となる、と主張した。
前半の議論は、参考になった。例えば、問題解決においても「創造力」が必要となること、問題の分析・解決策の考案にあたっては帰納・演繹などの思考様式が使われているなど。
また、問題を「構造化」し、「俯瞰的」に把握することなど、なんとなく思い浮かぶことを文章で表現することで理解が腑に落ちた部分があった。
後半は具体的な試みを取り上げたが、社会問題解決のための大学の研究の紹介に終始し、個人的にあまりおもしろくなかった。ただ、現在のIoTなどの関連づければ、そのヒントになるような事例があり(データの規模はまったく違うけれど)、当時(2004年出版)の類似の試みは参照できたと思う。